吉村昭を読む
夏は読書の季節でした。読書の秋といわれますが、私にとっては読書の夏です。
夏は日中は暑くて特別のイベントや約束がない限り出かけません。早朝食事前に散歩をすませ、パソコンで仕事(といっても現役時代のようなお金を稼ぐ仕事ではなく、メール送受信や原稿書きなどが主)をこなしたあとは、テレビで野球や映画を見たり、涼しいところにひっくり返って本を読みます。毎日が日曜日の退職者の特権と言えます。
今年集中的に読んだのが吉村昭と高杉良の小説です。高杉良については別の機会に書くつもりです。
吉村昭氏はつい先日、平成18年7月31日にすい臓がんで死去されました。享年79歳でした。新聞やテレビでその最後について報道されたのでご存知の方も多いと思います。「延命治療はしない」と遺言状にしたため、奥様の作家の津村節子さんの目の前で、自ら治療具を引き抜いて「死ぬよ」といって息を引き取ったそうです。素晴らしい最後だと思います。誰にでもできることではないでしょう。
吉村昭の小説は今まで読んだことはなかったのですが、今年2月「アメリカ彦蔵」をはじめて読んだとき大きな感動をいただきました。それから「夜明けの雷鳴」「大黒屋光太夫」「天狗騒乱」「黒船」「桜田門外の変」「生麦事件」「朱の丸御用船」「落日の宴」「敵討」「暁の旅人」「島抜け」「破獄」「プリズンの満月」「彦九郎山河」を読みました。幕末の人物や事件を描いた小説が主でした。
吉村昭の小説は史実を克明に調べ、それを積み上げて丁寧に描きます。会話の部分が少ないので大変読み応えがあり、時間がかかります。大好きな司馬遼太郎氏の小説は主人公に対する司馬さんのいとしさや愛情が表面に出るため、主人公に感情移入したものが多いのですが、吉村氏の小説は事実を淡々と積み上げたものが多く、主人公を冷静な目で客観的に描きあげます。司馬さんと違った味が出ていて、思わず引き込まれます。司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平、山本一力などとともに、私の愛読する歴史小説作家、時代小説作家になりました。
まだまだ読んでない作品がたくさんあります。これからも楽しみです。
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